馬場状態でタイムはどれくらい変わるかでは、雨による馬場の悪化がタイムに与える影響を検証しました。芝は道悪で遅くなり、ダートは速くなるという結果でした。
馬場が変わるのは天候だけではありません。芝は馬が走るたびに傷んでいくため、開催が進むにつれてコンディションが変化していきます。同じ「良馬場」でも、開催の初日と最終日では状態が違うはずです。
この変化がタイムにどう表れるかを、開催の前半(1〜3日目)と後半(4日目以降)に分けて比較してみます。対象は2021〜2025年の良馬場のレースです。
芝のタイム — 後半に遅くなる
小倉 芝1200m
| 勝数 | 平均タイム | 前半との差 | |
|---|---|---|---|
| 前半 | 109 | 68.3秒 | — |
| 後半 | 139 | 68.7秒 | +0.4秒 |
小倉 芝2000m
| 勝数 | 平均タイム | 前半との差 | |
|---|---|---|---|
| 前半 | 43 | 120.0秒 | — |
| 後半 | 79 | 121.0秒 | +1.0秒 |
中山 芝1200m
| 勝数 | 平均タイム | 前半との差 | |
|---|---|---|---|
| 前半 | 58 | 68.1秒 | — |
| 後半 | 77 | 68.6秒 | +0.5秒 |
中山 芝1600m
| 勝数 | 平均タイム | 前半との差 | |
|---|---|---|---|
| 前半 | 84 | 94.0秒 | — |
| 後半 | 166 | 94.6秒 | +0.6秒 |
新潟 芝1800m
| 勝数 | 平均タイム | 前半との差 | |
|---|---|---|---|
| 前半 | 68 | 107.0秒 | — |
| 後半 | 57 | 108.1秒 | +1.1秒 |
福島 芝1800m
| 勝数 | 平均タイム | 前半との差 | |
|---|---|---|---|
| 前半 | 53 | 108.8秒 | — |
| 後半 | 74 | 109.8秒 | +1.0秒 |
すべての例で、後半のほうがタイムが遅くなっています。新潟芝1800m(+1.1秒)や福島芝1800m(+1.0秒)は1秒以上の差があり、同じ良馬場でも走りやすさがかなり変わっていることがうかがえます。
小倉では1200m(+0.4秒)と2000m(+1.0秒)の差を比較できます。距離が長いほど影響が大きくなる傾向は、馬場状態の記事で確認した道悪の影響と同じです。
ダートのタイム — 前半も後半もほぼ同じ
同じ条件でダートを見てみます。
中山 ダート1800m
| 勝数 | 平均タイム | 前半との差 | |
|---|---|---|---|
| 前半 | 176 | 114.9秒 | — |
| 後半 | 247 | 114.9秒 | ±0秒 |
阪神 ダート1800m
| 勝数 | 平均タイム | 前半との差 | |
|---|---|---|---|
| 前半 | 134 | 114.3秒 | — |
| 後半 | 268 | 114.4秒 | +0.1秒 |
新潟 ダート1800m
| 勝数 | 平均タイム | 前半との差 | |
|---|---|---|---|
| 前半 | 127 | 113.5秒 | — |
| 後半 | 127 | 113.7秒 | +0.2秒 |
ダートでは前半と後半でほとんど差がありません。新潟芝1800m(+1.1秒)と新潟ダート1800m(+0.2秒)を比べると、芝とダートの違いがよく分かります。ダートは砂を補充・整備して管理するため、芝のように開催を通じて走行面が劣化しにくいと考えられます。
芝1800m — 競馬場による違い
芝1800mの勝ちタイムを全競馬場で並べてみます。
| 競馬場 | 前半 | 後半 | 差 |
|---|---|---|---|
| 新潟 | 107.0秒 | 108.1秒 | +1.1秒 |
| 福島 | 108.8秒 | 109.8秒 | +1.0秒 |
| 小倉 | 107.6秒 | 108.4秒 | +0.8秒 |
| 函館 | 108.3秒 | 108.8秒 | +0.5秒 |
| 中山 | 108.2秒 | 108.6秒 | +0.4秒 |
| 札幌 | 108.9秒 | 109.3秒 | +0.4秒 |
| 京都 | 107.0秒 | 107.1秒 | +0.1秒 |
| 東京 | 107.4秒 | 107.2秒 | -0.2秒 |
| 阪神 | 106.8秒 | 106.6秒 | -0.2秒 |
9場中7場で後半のほうが遅くなっています。差が大きいのはローカル開催の競馬場(新潟・福島・小倉・函館)で、いずれも0.5秒以上の低下です。
東京と阪神はわずかに速くなっていますが、差は0.2秒と小さく、ほぼ横ばいと見てよさそうです。
まとめ
同じ良馬場でも、開催の前半と後半では芝のタイムに明確な差があります。
- 芝: 9場中7場で後半に遅くなる。新潟・福島では1秒以上の差。距離が長いほど影響が大きい
- ダート: 前半と後半でほとんど変わらない(最大でも0.2秒差)
- 競馬場による差: ローカル場ほど影響が大きく、東京・阪神はほぼ横ばい
芝のタイムが変わる要因として、前の記事では天候(馬場状態)を取り上げました。今回のデータは、天候とは関係なく、開催が進むだけでも芝のコンディションが変化していることを示しています。タイムを比較する際には、馬場状態だけでなく「開催の何日目か」も意識しておく価値がありそうです。
なお、今回の分析では移動柵(仮柵)の影響を考慮できていません。JRAでは開催中に内側の柵の位置を外側へ動かし、傷んだ内ラチ沿いの芝を保護しながら外側のフレッシュな芝を使う運用をしています。柵が外に出れば走行ラインが変わり、コーナーの距離もわずかに長くなるため、タイムにも影響します。今回観測された後半のタイム低下は、芝の消耗そのものに加えて、移動柵による走行距離の変化も含まれている可能性があります。
本記事の集計は、原則として 2021〜2025 年の JRA レースの公開データに基づいています。集計条件や計算式は記事中に明記していますが、データの集計や解釈に誤りがある可能性もありますので、あくまでも参考情報としてご覧ください。
本記事は馬券の購入を推奨・助言するものではありません。詳しくは About および プライバシーポリシー をご覧ください。
関連記事
- 馬場状態でタイムはどれくらい変わるか — 芝は遅く、ダートは速くなる良馬場と道悪でタイムがどう変わるかを競馬場別に検証しました。芝は重馬場で1〜2秒遅くなる一方、ダートは逆に1〜2秒速くなります。1番人気の勝率にも明確な差が出ています。
- 東京競馬場のコース開放で芝とダートを見てきた2026年東京競馬最終日のコース開放で、芝コースとダートコースを実際に歩いてきました。内側と外側の芝の状態差、ダートに残る蹄の跡の迫力を写真で紹介します。
- 芝スタートのダートは本当に外枠有利なのかダートレースのうちスタート地点が芝コース上にあるレースの枠順バイアスを競馬場別に検証しました。「芝スタート=外枠有利」と言えるのは東京ダート1600mくらいで、他の競馬場ではダートスタートでも同程度かそれ以上に外枠が有利です。