馬券には券種ごとに異なる払戻率が設定されています。払戻率を知れば競馬の見え方が変わるで見たとおり、単勝・複勝は80%、三連単は72.5%です。
合理的に考えれば、払戻率が高い券種を選ぶのが有利なはずです。しかし実際の売上を見ると、まったく逆のことが起きています。
券種別の売上構成
JRA は券種別の売上構成比を直接公開していないため、JRA 公表データをもとに集計されたJRAの券種別年別占有率集計(ほはてい様)のデータを引用させていただきます(2022年度実績)。
| 券種 | 売上構成比 | 払戻率 |
|---|---|---|
| 三連単 | 28.4% | 72.5% |
| 三連複 | 22.2% | 75.0% |
| 馬連 | 13.1% | 77.5% |
| ワイド | 11.0% | 77.5% |
| 複勝 | 9.7% | 80.0% |
| 単勝 | 7.3% | 80.0% |
| 馬単 | 5.6% | 75.0% |
| 枠連 | 2.6% | 77.5% |
グラフにすると、三連単・三連複の占める割合の大きさが一目でわかります。

最高配当が出る三連単が最も売れているのは予想通りですが、意外だったのは三連複の大きさです。三連単と三連複を合わせると約5割。つまり、売上の半分は払戻率が75%以下の馬券です。
一方、払戻率が最も高い単勝と複勝を合わせても約17%にとどまります。最もシンプルで馴染みのある券種がここまで少ないのも意外です。複勝(9.7%)が単勝(7.3%)を上回っているのも興味深い点です。枠連は2.6%とさすがにマイナーな存在になっています。
払戻率と売上の逆転
この構図を整理すると、明確なパターンが浮かびます。
- 払戻率が 最も低い 三連単(72.5%)が 最も売れている
- 払戻率が 最も高い 単勝・複勝(80.0%)は あまり売れていない
期待値の観点からは、単勝を100円買う方が三連単を100円買うよりも有利です。それなのに、多くの人が三連単を選んでいます。
券種別の平均払戻額
当たったときの払戻額はどれくらい違うのか。券種別の的中時の払戻額(100円あたり)を集計してみました(2021〜2025年、JRA全レース)。
| 券種 | 平均払戻額 | 中央値 |
|---|---|---|
| 単勝 | 972円 | 460円 |
| 馬連 | 5,395円 | 1,770円 |
| 馬単 | 10,693円 | 3,320円 |
| 3連複 | 20,136円 | 4,790円 |
| 3連単 | 126,400円 | 25,490円 |
単勝の中央値が460円なのに対し、三連単は25,490円。当たったときのインパクトがまったく違います。
平均値はすべてのデータの合計を個数で割った値、中央値はデータを小さい順に並べたときのちょうど真ん中の値です。平均と中央値の乖離が大きいほど、一部の極端に大きい値に引っ張られていることを意味します。三連単は平均が約12.6万円ですが、中央値は約2.5万円。半分以上のレースでは2.5万円以下の配当ですが、大きく荒れたときの配当が平均を押し上げています。
なぜ払戻率の低い馬券が売れるのか
大きな要因は2つあると思います。
1つ目は、高配当への期待です。前述のとおり、三連単は数百倍、時には数万倍の配当がつきます。少額で大きなリターンを得られる可能性があること自体に価値を感じる心理は強く、上の表で見たように当たったときのインパクトが単勝とはまったく違います。
2つ目は、組合せ数が多い券種は購入点数が膨らみやすいという構造的な問題です。三連単はフォーメーションやボックスで買うと、あっという間に数十点になります。単勝で1万円を1頭に賭けるのは勇気がいりますが、三連単のフォーメーションでは気づいたら合計が1万円を超えていた、ということが普通に起きます。1点あたりは100円でも、点数が多ければ券種全体の売上は大きくなります。
それ以外にも、いくつかの理由が考えられます。
- そもそも払戻率の違いを知らない — 身も蓋もない話ですが、券種ごとに払戻率が異なること自体を意識していない人は少なくないと思います。自分自身、最初の頃は知りませんでした
- 予想の楽しさ — 1着を当てるだけの単勝に比べて、3頭の着順まで予想する三連単のほうが「考える余地」が多い。馬券は予想を楽しむ行為でもあるので、情報を活かせる券種が好まれやすい
- 低確率の過大評価 — 大穴馬券は割に合わないで取り上げた本命-大穴バイアスと同じ構造です。人間は低確率・高配当の事象を実際より魅力的に感じる傾向があります
- オッズに歪みが生まれやすい — 単勝は「どの馬が勝つか」というシンプルな問いに多くの人が賭けるので、オッズは馬の実力をそれなりに正確に反映します。一方、三連単は組み合わせが数千通りにもなるため、個々の組み合わせに十分な票が集まらず、実力に対してオッズが高すぎる「お買い得」な組み合わせが生まれやすくなります。払戻率では不利でも、自分の予想力で割安な馬券を見つけられると考える人にとっては、三連単のほうが魅力的に映るのだと思います
払戻率の観点では単勝や複勝が有利であることは数字が示しています。ただ、馬券は純粋な投資ではなく、予想を楽しむ娯楽でもあります。払戻率の7.5%の差(単勝80%と三連単72.5%)を「予想を楽しむコスト」と捉えるなら、三連単が売れていること自体は不思議ではないのかもしれません。
本記事の集計は、原則として 2021〜2025 年の JRA レースの公開データに基づいています。集計条件や計算式は記事中に明記していますが、データの集計や解釈に誤りがある可能性もありますので、あくまでも参考情報としてご覧ください。
本記事は馬券の購入を推奨・助言するものではありません。詳しくは About および プライバシーポリシー をご覧ください。