関西馬と関東馬の勝率差 — 競馬場別・クラス別に比較する

「関西馬が強い」という話は競馬ファンの間でよく聞きます。実際にどの程度の差があるのか、調教師の所属トレーニングセンター(美浦・栗東)をもとに、競馬場別・クラス別の勝率を調べました。

集計条件

  • 対象期間: 2021〜2025年(5年分)
  • 対象: JRA平地レース(障害レースを除く)
  • 関西馬: 栗東トレーニングセンター所属の調教師が管理する馬
  • 関東馬: 美浦トレーニングセンター所属の調教師が管理する馬
  • 関西馬と関東馬が両方出走しているレースのみを対象とする
  • 勝率 = 1着回数 ÷ 出走回数(同着の1着は勝ちとして数える)

片方しか出走していないレースを含めると、頭数やクラスの偏りが結果に混ざってしまいます。両方が出走しているレースに限定することで、こうした影響を抑えています。全レースの約63%(16,639レース中10,476レース)がこの条件に該当します。

なお京都競馬場は整備工事のため2021〜2022年の開催がありません(2020年11月着工、2023年4月にグランドオープン。JRA 令和5事業年度 事業報告書)。京都だけは2023〜2025年の3年分の集計です。また休止期間中は他場が代替開催を引き受けているため、競馬場ごとの出走数は開催数の増減を含んでいます。

全体の勝率

まず5年間の全体像です。

所属出走数勝率
栗東(関西)73,6018.50%
美浦(関東)69,5646.09%

栗東馬の勝率は8.50%、美浦馬は6.09%で、約2.4ポイントの差があります。レースごとの出走頭数は5〜18頭と幅がありますが(10頭以上が約90%)、両グループが出走するレースの平均頭数はほぼ同じ(いずれも約14頭)なので、頭数による影響は小さいと考えられます。

競馬場別の勝率

競馬場ごとに勝率を比較しました。差が大きい順に並べています。

競馬場別の勝率

競馬場栗東 勝率美浦 勝率栗東 出走数美浦 出走数
中京8.46%4.22%4.2413,9975,571
福島9.48%5.37%4.114,1977,015
阪神8.23%4.21%4.0211,8322,257
小倉8.26%4.38%3.878,0924,061
新潟9.19%5.59%3.607,60710,817
京都7.94%4.72%3.227,8471,548
函館9.07%7.12%1.954,4754,425
中山8.52%6.74%1.784,07512,468
東京8.31%6.96%1.356,24716,317
札幌8.41%7.49%0.925,2325,085

10場すべてで栗東馬が上回っていますが、差の大きさは競馬場によってかなり違います。

差が大きいのは中京(4.24)・福島(4.11)・阪神(4.02)です。この3場は出走数の構成がまったく違い、中京と阪神は栗東馬が多数派、福島は美浦馬が多数派です。それでも差の大きさは同じくらいなので、どちらの所属が数で上回っているかは勝率差にあまり効いていないようです。

一方、差が小さいのは札幌(0.92)・東京(1.35)・中山(1.78)です。美浦馬の地元である東京・中山ではかなり拮抗しています。札幌の0.92ポイントは、出走数(栗東5,232、美浦5,085)に対して数頭の勝ち負けで消える程度の幅なので、ここはほぼ互角と見たほうがよさそうです。

地元と遠征での成績

地元(美浦=東京・中山、栗東=阪神・京都)と遠征(それ以外の競馬場)に分けて比較しました。

地元と遠征での勝率

区分出走数勝率
関西馬・遠征53,9228.64%
関西馬・地元19,6798.12%
関東馬・地元28,7856.86%
関東馬・遠征40,7795.54%

関西馬は地元でも遠征先でも8%台を維持しており、遠征先ではむしろ勝率が上がっています。遠征に送り出す馬の選抜効果に加え、遠征先(主に関東・ローカル)の美浦馬に対して実力で上回っていることがうかがえます。

関東馬は地元で6.86%、遠征先では5.54%まで下がります。地元と遠征の差は1.32ポイントで、関西馬の差(0.52ポイント)よりも大きく、遠征時の不利がより顕著です。

中京は栗東から比較的近い競馬場ですが、ここでは地元を阪神・京都だけに限定しています。仮に中京を栗東の地元に含めても、地元8.26%・遠征8.70%となり、遠征のほうが高いという関係は変わりません。

クラス別の勝率

クラスによって差の大きさに違いがあるかを確認しました。

クラス別の勝率

クラス栗東 勝率美浦 勝率栗東 出走数美浦 出走数
新馬9.82%6.12%3.704,3497,973
未勝利8.76%5.64%3.1217,13317,043
1勝クラス9.12%6.18%2.9418,35919,377
2勝クラス8.75%6.15%2.6013,81213,061
3勝クラス7.46%6.20%1.268,5275,674
オープン7.11%6.71%0.4011,4216,436

新馬・未勝利では3ポイント以上の差がありますが、クラスが上がるにつれて縮まっていきます。オープンの0.40ポイントは出走数に対して小さく、差があるとは言い切れない水準です。上のクラスまで勝ち上がってくる関東馬は、それだけ実力が絞り込まれているということかもしれません。

年別の推移と美浦トレセン改修

関東馬の不利の一因として、美浦トレーニングセンターの坂路コースの設備差が長く指摘されてきました。栗東の坂路は全長1,085メートル・高低差32メートル(JRA 施設ガイド:栗東トレーニング・センター)なのに対し、改修前の美浦は高低差18メートルしかなく、坂路調教の強度に差がありました。

2023年に大規模な改修が行われ、全長1,200メートル・高低差33メートル(従来から15メートルの増加)の新坂路が同年10月にオープンしています(JRA 施設ガイド:美浦トレーニング・センター)。工事に伴い、2023年は5月末から10月初めまで坂路を使えない期間がありました。5年間の推移を見てみます。

年別の勝率推移

栗東 勝率美浦 勝率
20218.50%5.99%2.50
20228.62%6.06%2.56
20238.42%6.13%2.29
20248.55%6.09%2.46
20258.43%6.15%2.28

5年間の差は2.28〜2.56ポイントの範囲に収まっており、目立った変化はありません。年ごとの出走数は各所属1万4千前後なので、この程度の上下は数十頭の勝ち負けで動く幅です。新坂路が稼働した2024・2025年に差が縮んだ、とは言えないと思います。

むしろ気になるのは2023年です。この年は5月末から10月初めまで坂路が使えませんでしたが、差は2.29と5年間で小さいほうでした。坂路が半年近く使えなくても差が広がらなかったことになり、坂路の設備差だけで説明するのは難しそうです。

競馬場ごとに勝率差(栗東の勝率 − 美浦の勝率)の推移も見てみます。

競馬場別の勝率差の推移

線が上下に大きく振れていますが、これはほとんど出走数の少なさによるものだと思われます。たとえば阪神の美浦馬は年あたり192〜568頭で、勝ち馬は5〜30頭しかいません。1年単位では数ポイント動いてもおかしくないので、個別の競馬場の年ごとの上下から傾向を読み取るのは難しそうです(京都は2023年からの3年分です)。

出走数が比較的多い東京・中山(太線)でも、東京は0.4〜2.3ポイント、中山は1.1〜2.4ポイントの間を行き来しています。全体として、どの競馬場でも差が一方向に縮んでいるようには見えません。

新坂路のオープンから2025年末までは2年3か月です。坂路で鍛えた若い世代が上のクラスで結果を出すには、もう少し時間がかかるかもしれません。今後の推移を見守る必要がありそうです。


関西馬の優位は10場すべて・全クラスで同じ向きに出ましたが、差の大きさには幅があり、札幌とオープンクラスではほぼ互角と言える水準まで縮まります。5年間の推移では差はほとんど動いておらず、美浦トレセンの坂路改修の影響を読み取るのは現時点では難しそうです。

本記事の集計は、原則として 2021〜2025 年の JRA レースの公開データに基づいています。集計条件や計算式は記事中に明記していますが、データの集計や解釈に誤りがある可能性もありますので、あくまでも参考情報としてご覧ください。

本記事は馬券の購入を推奨・助言するものではありません。詳しくは About および プライバシーポリシー をご覧ください。

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