競馬中継でよく耳にする「スローペース」「ハイペース」。感覚的にはわかるものの、どこからがスローでどこからがハイなのか、明確な基準はあまり語られません。ここではタイムからペースを数値化し、その分布や傾向を調べてみます。
ペースの定義
本記事では、レースに出走した全馬の平均タイムをもとに、次のようにペースを定義します。
- 前半ペース =(平均走破タイム - 平均上がり3Fタイム)÷ 前半のハロン数
- 後半ペース = 平均上がり3Fタイム ÷ 3
- ペース比 = 後半ペース ÷ 前半ペース
平均走破タイム・平均上がり3Fタイムは、いずれもレース内の全出走馬の平均です。
ペース比が1.0なら前半と後半が同じ速さ(イーブンペース)です。1.0より大きければ前半のほうが速いハイペース、1.0未満なら前半が後半より遅いスローペースになります。数字が大きいほどハイペースです。
便宜上「前半」「後半」と呼んでいますが、距離のちょうど半分ではないので注意してください。後半は常に上がり3F(600m)で固定なので、前半の長さは距離によって変わります。たとえば1600mなら前半1000m(5F)・後半600m(3F)、2400mなら前半1800m(9F)・後半600m(3F)です。
クラスによって絶対的なタイムは異なりますが、ペース比は「前半と後半の速さのバランス」を見ているため、クラスの能力差の影響を受けにくい指標です。
集計条件
- 対象: 2021〜2025年のJRA平地レース(障害レースを除く)
- 各レースの出走馬全体の平均タイム・平均上がり3Fからペース比を算出
- タイムまたは上がり3Fが記録されていない馬は除外
ペース比の分布
芝・ダートそれぞれのペース比の分布です。

芝・ダートともにきれいな正規分布に近い形をしています。
- 芝: 平均0.98、スローペース寄り
- ダート: 平均1.04、ハイペース寄り
芝は後半に脚を溜めてスパートするレースが多く、ダートは前半から飛ばす展開が多いことがわかります。芝とダートでは分布の中心が明確にずれており、ペースの性質が根本的に異なると言えそうです。
頭数とペース
出走頭数ごとの平均ペース比です。


芝・ダートともに、頭数が増えるほどペース比が上がる(ハイペースに近づく)傾向があります。芝は6頭立ての0.95から18頭立ての0.99まで変化しています。
前半・後半のどちらが変化しているのかを分解してみます。

芝では、6頭立てを基準にすると前半の1Fあたりタイムは18頭で約0.48秒速くなっているのに対し、後半はほぼ変わっていません。

ダートも同様に、前半の変化が大きく(8頭→16頭で約0.39秒)、後半の変化は小さめです。芝・ダートともに、多頭数でペースが上がるのは後半が遅くなる(詰まる)からではなく、前半の位置取り争いが激しくなるためだと考えられます。
距離とペース
距離帯ごとのペース比の分布です。

芝では短距離(~1400m)の分布が明らかに右寄り(ハイペース寄り)で、イーブンペースの1.0付近にピークがあります。マイル以上ではスローペース寄りの分布となり、中距離・長距離ほど左にずれていきます。

ダートも短距離ほどハイペース寄りの傾向は同じですが、全距離帯の分布が1.0より右にあり、どの距離でも前半のほうが速い展開が基本です。
クラスとペース
クラスごとのペース比の分布です。


芝・ダートともに新馬戦の分布が最もスローペース寄りです。レース経験がなく、序盤を抑え気味に走る馬が多いためだと思われます。
一方、未勝利戦は分布が右に広がっており、ハイペースになるレースが他のクラスより多い傾向があります。
1勝クラス以上では分布の形がほぼ重なっており、クラスが上がってもペースの傾向はあまり変わりません。頭数や距離と比べると、クラスはペースに対する影響が小さいと言えそうです。
まとめ
ペース比(後半/前半の1Fあたりタイムの比率)を使うと、レースのペースを定量的に把握できます。
- 芝はスローペース寄り(平均0.98)、ダートはハイペース寄り(平均1.04)
- 頭数が多いほどハイペースになりやすく、その原因は前半が速くなること
- 短距離ほどハイペース、長距離ほどスローペース
- 新馬戦は突出してスロー、未勝利はハイペース寄り。1勝クラス以上はクラス差が小さい
次の記事では、このペース比と脚質(レース中の位置取り)の関係を掘り下げていきます。
本記事の集計は、原則として 2021〜2025 年の JRA レースの公開データに基づいています。集計条件や計算式は記事中に明記していますが、データの集計や解釈に誤りがある可能性もありますので、あくまでも参考情報としてご覧ください。
本記事は馬券の購入を推奨・助言するものではありません。詳しくは About および プライバシーポリシー をご覧ください。
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