前回の記事ではペース比(後半1Fあたりタイム ÷ 前半1Fあたりタイム)を定義し、その分布や要因を調べました。今回はペースと走破タイムの関係を見ていきます。
全体の散布図
まず、2021〜2025年の全平地レースについて、ペース比とタイムをプロットしてみます。
平均走破タイム


1着タイム


いずれも距離ごとに縦の帯状にクラスタが並んでいます。平均タイムと1着タイムで全体の形は似ていますが、1着タイムのほうがクラスタの幅が広く、ばらつきが大きいことがわかります。
この全体図だけではペースとタイムの関係はわかりません。距離が違えばタイムの水準がまったく異なるため、距離を揃えないと比較できないためです。さらに、同じ距離でも競馬場のコース形態やクラスによってタイムの基準が変わります。
そこで、競馬場と距離を固定して個別に見ていきます。クラスによるタイム差の影響も排除するため、以下では1勝クラスのレースに絞って集計しています。
条件を固定した散布図(1勝クラス)
芝:東京1600m
まず平均走破タイムとの関係です。

相関係数 r = -0.52 で、ハイペースのレースほど平均タイムが速い傾向があります。
次に1着タイムとの関係です。

1着タイムでは r = -0.67 とさらに強い負の相関になります。東京1600mは直線が長く、ハイペースのレースでは勝ち馬のタイムが顕著に速くなるようです。平均タイムより1着タイムのほうが相関が強いということは、ハイペースの恩恵を最も受けるのが勝ち馬だと言えるかもしれません。
芝:中山2000m

中山2000mでは r = 0.48 と、芝にもかかわらず正の相関(ハイペース → 遅いタイム)が出ています。コーナーが多く小回りなコースでは、前半のペースが上がると後半で大きく減速するため、全体の平均タイムはかえって遅くなると思われます。

1着タイムでは r = 0.37 に弱まります。ハイペースで全体が消耗するなかでも、勝ち馬はある程度タイムを維持できている、ということかもしれません。ただし n = 48 とサンプルが少なく、解釈には注意が必要です。
ダート:中山1800m

ダート中山1800mでは平均タイムとの相関が r = 0.16 と弱い正の相関です。

1着タイムでは r = -0.08 とほぼ無相関になります。平均タイムではハイペースほど遅くなる傾向がわずかにありましたが、勝ち馬に限るとその傾向は消えています。
ダート:京都1800m

京都1800mも平均タイムでは r = 0.25 の弱い正の相関です。

1着タイムでは r = -0.06 とやはり無相関です。ダートでは中山・京都ともに、ハイペースで平均タイムは遅くなるものの、勝ち馬のタイムにはほとんど影響しないという結果になりました。
全体の傾向
主な競馬場・距離の相関係数をまとめます(いずれも1勝クラスに限定)。
| 条件 | 平均タイム r | 1着タイム r | n |
|---|---|---|---|
| 芝・東京1600m | -0.52 | -0.67 | 72 |
| 芝・東京2400m | -0.55 | -0.67 | 39 |
| 芝・阪神2000m | -0.48 | -0.55 | 32 |
| 芝・阪神1600m | -0.25 | -0.53 | 47 |
| 芝・京都1600m | -0.07 | -0.17 | 29 |
| 芝・中山2000m | 0.48 | 0.37 | 48 |
| ダート・東京1600m | -0.09 | -0.27 | 158 |
| ダート・阪神1800m | 0.02 | -0.26 | 164 |
| ダート・中山1800m | 0.16 | -0.08 | 178 |
| ダート・京都1800m | 0.25 | -0.06 | 93 |
平均タイムと1着タイムで傾向が異なるのが興味深い点です。
- 芝: 平均タイムでも負の相関が多いですが、1着タイムではさらに強まります。東京・阪神では r = -0.5〜-0.7 に達し、ハイペースのレースで勝ち馬のタイムが速くなる傾向が明確です。中山2000mは例外で正の相関が残りますが、1着タイムでは弱まります
- ダート: 平均タイムでは弱い正の相関(ハイペース → 遅いタイム)が見られた条件でも、1着タイムではほぼ無相関か弱い負の相関に変わります
この違いは、ハイペースになると敗退馬のタイムが大きく落ちる一方で、勝ち馬はペースの影響を受けにくい(あるいはむしろ恩恵を受ける)ことを示唆しています。平均タイムの正の相関は、全体が消耗したことの反映であり、勝ち馬個別のパフォーマンスとは異なる傾向です。
ペースとタイムの関係は、タイムの取り方(平均か1着か)やコース形態によって方向が変わることもあり、単純ではないようです。
本記事の集計は、原則として 2021〜2025 年の JRA レースの公開データに基づいています。集計条件や計算式は記事中に明記していますが、データの集計や解釈に誤りがある可能性もありますので、あくまでも参考情報としてご覧ください。
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