枠順の有利不利は、枠順で成績は変わるかからダート・芝の掘り下げまで、ずっと枠ごとの複勝率で見てきました。
書き続けるうちに、この物差し自体に無視できない問題があることが気になってきました。今回は結論を出す記事ではなく、何で測るかを決め直した記録です。
なぜ複勝率を使ったか
単純に勝率を使わないのは、1着が1レースに1頭しかいないためです。3着以内なら1レースに3頭いるので、その分ぶれが小さくなります。あとで出てくる検出効率の比較でも、勝率は複勝率にはっきり劣りました。
複勝率の問題点
複勝率には3つの問題点があります。
1着と3着が同じ1件になる
複勝率は、1着も3着も同じ1件として数えます。2着と3着の間には何の差もつかず、3着と4着の間にだけ線が引かれます。
ハナ差で3着だった馬と4着だった馬は、走った内容としてはほとんど同じはずです。逆に、圧勝した1着と、辛うじて3着に残った馬は同じ1件になります。どこに線を引くかで結果が変わる指標だということです。
同じ着順でも価値が違う
8頭立ての3着と16頭立ての3着も、同じ1件です。
ただ、8頭立ての3着は後ろに5頭しかいませんが、16頭立ての3着は13頭います。走った中身は同じではないはずです。同じことは着順のどこでも言えて、8頭立ての6着と16頭立ての6着も違います。
着順そのものの価値が頭数によって変わるのに、複勝率は「3着以内かどうか」しか見ていません。
馬番によって期待値が違う
何の有利不利もなければ、3着以内に入る確率は 3 ÷ 頭数 です。ところが馬番18は18頭立てにしか存在せず、馬番1はすべてのレースに存在します。そもそも期待値が違い、馬番別の複勝率は外に行くほど下がってしまいます。
馬番が奇数か偶数かで成績が違う以降の記事で「期待値からのずれ」を使っているのは、この理由からです。
枠で見るときも同じです。出走頭数が増えると外側の枠から2頭ずつ埋まっていくので、枠によっても期待値がわずかにずれます(土曜と日曜、1日違うだけで枠の有利不利が違うでも触れています)。
指標を考える
候補を9つ作りました。上の4つは複勝率と同じく着順のどこかに線を引くもの、次の2つは着順ごとに重みをつけるもの、その次の2つは線を引かず順位そのものを使うもの、最後は順位ではなく着差を使うものです。
| 指標 | 説明 |
|---|---|
| 勝率 | 1着なら1。16頭立てなら2着も16着も同じ0 |
| 複勝率 | 3着以内なら1。現状の指標 |
| 複勝率(頭数補正) | 3着以内なら 頭数 ÷ 3。8頭立ての3着は2.67、16頭立ての3着は5.33 |
| 上位1/3以内率 | 着順が上位1/3なら1。16頭立てなら5着まで、8頭立てなら2着まで |
| 賞金ポイント | 1着1.0 / 2着0.40 / 3着0.25 / 4着0.15 / 5着0.10。6着以下はすべて0 |
| 着順の逆数 | 1 ÷ 着順。1着1.000、2着0.500、3着0.333、10着0.100 |
| 相対順位スコア | (頭数 − 着順) ÷ (頭数 − 1)。16頭立てなら1着1.000、3着0.867、8着0.533、16着0.000 |
| 正規スコア | 順位を正規分布に変換する。16頭立てなら1着+1.86、3着+1.01、8着+0.08、16着−1.86 |
| タイム差 | レース内で走破タイムを標準化する。0.1秒差の1着と、1秒離した1着を区別できる |
いずれも「1出走 = 1件」で、大きいほど良い成績です。頭数補正が入るものは、平均が1になるよう正規化しています。
ベンチマークを考える
2つ用意しました。
(a) 枠順バイアスの検出効率。 良い指標なら、少ないレース数で同じ結論にたどり着けるはずです。それを測ります。
まず、複勝率での検証で傾向が明確だった12コースを用意します。芝スタートのダートは外枠ほど芝の上を長く走れるので外枠有利、小回りの短距離はコーナーの距離ロスが効くので内枠有利、というように、コースの形からも説明がつくところです。
ここには本物の信号があるはずなので、それをはっきり拾えた指標ほど良い指標ということになります。各コースで「馬番が外に寄るほど指標の値が高いか」を測ります。
ただし、測った値の大きさをそのまま比べることはできません。指標によって値の幅が違いますし、たまたま大きく出ただけかもしれないからです。
そこで、同じレースの中で馬番だけを入れ替えた偽のデータを1000回作り、同じ計算をします。頭数もメンバーも本物のまま、枠順だけがランダムになったデータです。本物の値が、この1000回のばらつきから何個ぶん離れているか。これなら指標が違っても同じ土俵で比べられます。
(b) 次走予測力。 同じ馬の連続する2走を並べ、前走の指標値と次走成績の相関を取ります。前走1着の馬は昇級するので、前走と次走が同じクラスの組(164,848組)に限りました。
(a) は「同じ結論に何レース要るか」、(b) は「そもそも馬の実力を測れているか」を見ています。(a) だけだと、たまたま枠順に効くだけの指標を選んでしまいかねません。
評価する
対象は2021〜2025年のJRA平地レース(障害競走を除く)で、17,265レース・235,675出走です。着順は完走馬のみを使い、競走中止・除外は集計から外しています。
まず検出効率です。「必要レース数」は複勝率と同じ確からしさを得るのに要るレース数の比で、小さいほど良い指標になります。
| 指標 | 必要レース数 |
|---|---|
| 正規スコア | 0.58 |
| 相対順位スコア | 0.62 |
| タイム差 | 0.64 |
| 着順の逆数 | 0.75 |
| 賞金ポイント | 0.84 |
| 複勝率(頭数補正) | 0.90 |
| 複勝率 | 1.00 |
| 上位1/3以内率 | 1.08 |
| 勝率 | 1.82 |
次走予測力です。こちらは大きいほど良い指標になります。
| 前走の指標 | 次走成績との相関 |
|---|---|
| 相対順位スコア | 0.408 |
| タイム差 | 0.404 |
| 正規スコア | 0.403 |
| 着順の逆数 | 0.330 |
| 上位1/3以内率 | 0.328 |
| 賞金ポイント | 0.295 |
| 複勝率 | 0.283 |
| 複勝率(頭数補正) | 0.281 |
| 勝率 | 0.032 |
2つとも上位に来たのは、正規スコア・相対順位スコア・タイム差の3つでした。 どれも順位や着差をそのまま使う指標で、線を引く指標とは差がついています。3つの間の差は小さく、検出効率は0.58〜0.64、次走との相関は0.403〜0.408の範囲に収まっています。
数字ではほとんど差がつかないので、もっともわかりやすくて扱いやすい相対順位スコアを採用するのが妥当そうです。
相対順位スコアは「頭数の何%の位置で走ったか」を表しています。16頭立ての3着は0.867、8頭立ての2着は0.857。どちらも上から1割強の位置なので、ほぼ同じ値になります。
意外だったのは、上位を強く重み付けした指標が伸びなかったことです。前走の相対順位に対して次走成績がほぼ直線的に下がるので、線形の重み(=相対順位スコア)が実測にそのまま合っていました。
つまり、「1着と3着を潰していること」より「4着以下を全部潰していること」のほうが、複勝率の問題としては大きかったことになります。
相対順位スコアの効果
小倉芝1200(376レース)で並べてみます。まずは、これまでどおり枠ごとの複勝率です。馬番による期待値の差を取り除くため、期待値からのずれで見ています。

内が低く外が高いことは見て取れますが、3枠と7枠が飛び出していて、線としては読めません。
相対順位スコアのほうは、枠ではなく馬番の相対位置で並べます。枠は、頭数によって指す位置が変わってしまうためです。
出走頭数が16頭に満たないと外側の枠から2頭ずつ入るので、内寄りの枠が押し出されます。10頭立ての5枠は馬番5で内から45%の位置ですが、16頭立ての5枠は馬番9・10で56%。相対位置で切れば、頭数が変わっても同じ位置を指します。
相対位置 = (馬番 − 0.5) ÷ 頭数
16頭立ての馬番1なら 0.031、馬番16なら 0.969 です。これを8等分し、内から順に区分1〜区分8とします。16頭立てなら2頭ずつ、8頭立てなら1頭ずつ入ります。8で割り切れない頭数では、1頭だけの区分と2頭の区分が混ざります。15頭立てならこうなります。
| 区分 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 馬番 | 1, 2 | 3, 4 | 5, 6 | 7 | 8, 9 | 10, 11 | 12, 13 | 14, 15 |
以降の記事でも、枠順の有利不利はこの8区分で見ていきます。

最外を除けば、内から外へ一直線に上がる形になりました。最外だけ下がるのは複勝率のほうにも出ているので、このコースの特徴かもしれません。
ただしどのコースでもこうなるわけではありません。 誤差そのものが小さくなるぶん、同じ揺れがかえって目立つコースもあります。12コースで見ると、線が滑らかになったのは半分程度でした。
はっきり違うのは、外内の傾きが誤差の何倍に見えるかです。

12コース中10コースで、相対順位スコアのほうが大きくなりました。 同じレース数から、より確かな結論が出せているということです。札幌芝1200(1.10 → 3.11)や中山芝2000(0.65 → 2.03)のように、複勝率では誤差に埋もれていたものが見えるようになったコースもあります。
次回予告
これで枠順の有利不利を測る準備ができた、と思っていました。
ところが実際に測り直してみると、とある問題が見つかります。相対順位スコアには、この記事では気づいていなかった落とし穴がありました。
結果として、主に使う指標はもう一度変わることになります。続きは次の記事で。
本記事の集計は、原則として 2021〜2025 年の JRA レースの公開データに基づいています。集計条件や計算式は記事中に明記していますが、データの集計や解釈に誤りがある可能性もありますので、あくまでも参考情報としてご覧ください。
本記事は馬券の購入を推奨・助言するものではありません。詳しくは About および プライバシーポリシー をご覧ください。
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